《MUMEI》
一章:零
お月様は地上を見下して笑います、嗤います。
笑い過ぎて赤く染まった姿を見た人間は、お月様を畏れていました。
人間から見えるお月様は、とても綺麗で神々しく、時に恐ろしくなる程の神秘さを纏っています。
人間にとって美しい存在がお月様でした。
彼等は知らないのです、お月様の本当の姿を。
目に見えない部分がどうなっているのかを。
それを知る人間は、誰一人としていないのです。
私以外には……。
お月様、お月様。
今日は何して遊ぶの?
鬼ごっこ? かくれんぼ?
それとも、かけっこにしましょうか?
お月様、お月様。
逆さま、反対、お月様。
逃げたら怒るの? 帰っちゃ嫌なの?
淋しがり屋なお月様。
お月様に拐われた、一人の少女は微笑んだ。
一度堕ちたら逃げられぬ。
お月様からは逃げられぬ。
鬼ごっこ、かくれんぼ。
必ずお月様が勝つからね。
お月様、お月様。
お願い、還して、お家に帰りたい。
泣き縋る少女にお月様、制裁加えたよ。
独りぼっち、独りきり。
お月様、またまた独り。
逆さま、反対、天邪鬼。
遊んで、苛めて、時は満ちたよ。
次に堕ちるのだぁれだ?
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫