《MUMEI》

「……俺を忘れないな?」

疑わしげに聞いてくる。


「うん。」


「じゃあ、これ。」

七生は自分のアクセを俺に付け直した。
大きい手が器用に俺の首の後ろに回る。


「……なに?」


「いいから、行け。待っててやるから。」

七生が俺の背中を押した。
自転車に乗って駅まで必死で向かう。
七生が背中を押してくれたからか、幾分かは軽くなっている。

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