《MUMEI》
祐の嫉妬
「あり得ないだろ」


俺は即答した。


(祐ならわかるけど)


あの真面目で一途な葛西先輩に限ってそれはあり得ないと思った。


「それがあるんだよ! ほら、こいつ!表紙のヤツ!」


祐は隣にいる俺にグシャグシャになった雑誌を押し付けてきた。


この新幹線は二人がけと三人がけの座席があり


頼とエイミー


頼の両親とエイミーの母親


そして、俺と祐が並んで座っていた。


ちなみに


俺と祐だけ列が違うせいか、皆他人の振りをしていた。


「どうしてこいつが葛西先輩の浮気相手になるんだよ」


俺は表紙の金髪男の写真を叩きながら祐を見た。


「今日も俺と会うの断ったくせに、そいつに会ってるんだよ」


(北海道出身なのか?)


何気なくページを捲ると、金髪男のプロフィールがあった。


案の定、金髪男は北海道出身だった。


ビジュアル系バンドのボーカルである男は、今度単独写真集を出すと書いてあった。


(ん? 写真集?)


確か葉月さんも同郷の芸能人の写真集を出すとブログにあった。


(まさか…)


「…金髪男と会うの、仕事、じゃないよな?」

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