《MUMEI》

「それで‥?」

「それで‥‥‥帰ろうと思ったんです、家に」





その、帰り道だったんだ。





ご主人様に声をかけて頂いたのは‥。





『執事やってみないかい?』





──あの時、ご主人様に出会っていなかったら‥。





「お父様──あんたが私に必要だ、って思ったからそう言ったのよね‥?」

「はい‥‥‥全然お役に立てていませんが‥」

「──そうでもないんじゃない?」

「ぇ‥」

「ま、ほんとに厄介だけど──‥でも私、あんたが来た日──ちょっと嬉しかった」

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