《MUMEI》
タクシーで
駅から高山本家までは、大人組と子供組に分かれ、タクシーで向かった。


「とにかく、雅樹に会えなくて寂しい俺を慰めて」

「無理」

「即答!?」

「うるさい。エイミーが迷惑してるだろ」


乗った途端にこんなやりとりが始まり、確かにエイミーは不安そうな顔をしていた。


(祐の印象最悪だな)


一応、思い出したように新幹線の中で祐は皆に挨拶したが、エイミーとその母親の笑顔は明らかにひきつっていた。


「そうだ、祐也。柊のご機嫌取りもそうだけど、後で志貴にも謝っといて」

「お前がしろよ」

「嫌だ、怖いもん」


(面倒なだけだな)


エイミーにすがりつく頼は、どう見ても本気で怖がっていなかった。


「今日会えたら謝るけどさ」

「無理なの知ってて言うなよ」


志貴は、というか、高山家のほとんどの女性は今日のパーティーに出席しない。


それは、エイミーの母親が日本人の女を嫌っているからで、果穂さんは今日、その様子を見極め、少なくとも、身内になる自分達には敵意を向けないようにするつもりだった。


(… … あれ?)


そのはずなのにと、俺は何度も首を傾げた。


頼は珍しく本気で驚いていた。

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