《MUMEI》 男装再び「よう、祐也お疲れ」 そう言った志貴の声はいつもより低かった。 「お疲れ、祐也」 (…あれ?) てっきりすねていると思った柊の態度は普通だった。 「「祐也?」」 「あ、あぁ。ただいま」 「そうだよな。普通驚くよな」 「だよなー志貴、違和感無さすぎ」 「…かっこいい」 俺の戸惑いは志貴と柊に対してだったが 残りの三人の意見は志貴限定だった。 「駄目だよエイミー!あれは…」 「何? 頼」 (く、黒!) 焦る頼に笑顔を向ける志貴だが、俺も周りもその笑顔に恐怖を感じた。 「祐也、借りてごめんなさい」 「許してやるよ」 志貴は言動も男らしかったが 今日は服装も、男らしかった。 (芸能人顔負けだよな) 俺はあまりテレビを観ないから、詳しくないが、今日の男装した志貴は、祐に押し付けられて見た雑誌の金髪男より、はるかにかっこよかった。 そんな志貴を、エイミーの母親は、全く女性とは気付かず エイミーの母親は、その場にいた誰よりも 娘の婚約者の頼よりも 志貴を気に入っていた。 前へ |次へ |
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