《MUMEI》
延長希望
『やっぱり美鈴…でも、くるみだって』と自分の世界に浸っている厳は、ますます孤立していたが


(まぁ、仕方ないか)


俺達は、放置する事にした。


それでもパーティー終盤


ケーキが目の前に来た時には、頼と俺で厳を現実に戻した。


「あー、婚約祝い用意してない」


厳に、部活で使うスポーツタオルと靴下


頼に、台本チェックに使う赤ペンとボールペン、それに意味がわからない時用の辞書をプレゼントした俺は、エイミーに謝った。


「いいです。私にはこれがあるし」


そう言うエイミーの右手の薬指には、婚約指輪が光っていた。


「可愛い!」


エイミーと対になる婚約指輪をやはり右手の薬指にはめている頼は


今日何度目かわからない、キスと抱擁をエイミーにしていた。


「はいはい。寂しいねー厳。何か他にもあげようか?」


果穂さんが珍しく厳に優しい言葉をかけた。


その瞬間


「じゃあ、花嫁候補決める時期… 延長して下さい!」


厳が叫んだと同時に、果穂さんの周りの温度が下がった気がした。


「お願いします!このままじゃどっちを選んでも後悔しそうなんで!」


厳は必死に頭を下げた。

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