《MUMEI》 果穂さんの謝罪「ごめんね、厳」 その一言に、静かになった会場がどよめいた。 言われた厳は、口を開けた間抜けな表情のまま、固まっていた。 「厳が望むなら、延長させてあげたかった。 たとえ望む進路じゃなくても、残った二人は厳を恨まないし、二人は仲良しだからこそ、選ばれ人間を祝福すると、私は思う」 (…いつもと逆じゃないか?) こういう温かい言葉をかけるのは、本来果穂さんではなく大志さんのはずだった。 「ど、どうしたのばあちゃん。じいちゃんみたいだよ」 「…何ですって?」 「何でもございません!」 厳は椅子から降りて土下座した。 (そうだよな、これが果穂さんだよな) そして俺は聞いてしまった。 たまたまトイレから出た時、柱の側に果穂さんと大志さんがいたから。 「やっぱり大志みたいには無理ね」 「ちなみに冷たい俺はどうだった? かなり自分では違和感あったんだけど」 「全然完璧。さ、寝ましょう」 「そうだね」 『おやすみ田中君』 (ゲッ!) 大志さんは俺に気付いていた。 (役割交換してたんだ。…でもやっぱり大志さんは底が知れない) 去っていく二人を見ながらそう思った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |