《MUMEI》

激しい感情を抑えて、もう一度頭を下げて、ホントにすみませんでしたぁ……と消え入りそうな声で言い直した。しかし、《彼》はまた、「誠意が見えないなぁ〜??」とふざけた。





…………ちっくしょーーーッ!!





涙を必死にこらえていると、


「もう許してあげなよ、おとなげない……」


見兼ねた竹内さんが、《彼》をたしなめてくれた。





…………竹内さん。


なんて優しいひと………。





わたしは心底、感謝する。


《彼》は面白くない顔をして、まんじゅうの山に手を伸ばし、もうひとつ、口へ放り投げる。


「……まぁ、今日のところはこれくらいで勘弁してやるか」


独り言のように呟いた台詞に、わたしはホッと胸を撫で下ろす。

そんなわたしを、《彼》は睨みつけて、





「今度、俺に面倒かけたら、許さねーから、マジで」





…………凄まれた。





「ハイ………気をつけます」


しょんぼり答えたわたしに、竹内さんが優しく声をかけてくる。


「ゴメンね、わざわざこんなにお菓子おごって貰っちゃって………」


なぜか謝ってくれた。本当にいい人なのだろう。

それが面白くなかったのか、《彼》は刺々しい声で言った。


「当然だろーが。つーか、まんじゅうで許して貰おうなんて、考え甘すぎ」





…………くぅっ!!





図星だったので、やっぱりなにも言い返せない。ぐうの音も出ない。

竹内さんは《彼》の方を見て、呆れたように言う。


「もー、なんでそういうこと言うかな〜??」


「気持ちの問題でしょ??」と説教したのだが、《彼》は聞く耳を持たないようで、子供っぽくプイッと、そっぽを向いた。

竹内さんは諦めたのか、やれやれといったふうに肩を竦めた。


そのとき。


「なんだか楽しそうねぇ??」


トメばあちゃんがお茶が入った湯呑みを3つ持って来てくれた。長椅子の上に置きながら、「わたしも混ぜてくれる??」と無邪気に言う。


「若いひとたちが集まると、やっぱり明るくていいわねぇ。見てるこっちがワクワクしちゃうわ」


トメばあちゃんが現れたことで、その場の空気が少し和んだ。

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