《MUMEI》
エンディング
火竜久一郎は、ソファにすわり、パソコンに向かっていた。
昼はまだ暑いが、朝と夜は涼しい。街はすっかり秋色に染まりつつある。
火竜はTシャツにジーパン。半袖の季節も、もうすぐ終わる。夏の終わりというのは、いつでも寂しいものだ。
水割りをひと口飲む。氷の音が心地良い。
愛しの静果がバスルームから出てきた。
「あれ?」
「ヤバい?」
静果が顔を赤くして笑った。男のロマン、ワイシャツ上だけスタイルだ。
しなやかな脚が強調され、男心をくすぐる。
静果は火竜の真向かいにすわった。
「遠いよ」
「また無理やり犯されたら怖いから」
「犯すとか言うなよ」
「レイプだよ」
「レイプとか言っちゃダメだよ。手足縛ったわけじゃないんだから」
静果は水割りのグラスを手にすると、笑顔で睨んだ。
「そういうプレイしたいんでしょ?」
「違う違う。静果がイヤだったら絶対やらないよ」
静果は水割りをひと口飲むと、グラスをテーブルに置き、思わせぶりに伸びをして見せた。
セクシーで魅惑的なしぐさに、火竜は目を見張った。
「別に。イヤじゃないよ」
「マジか?」
「何目輝かせてんの?」
火竜は慌てて目を叩いた。
「輝いてねえよ」
「本当に危ないね」
「危ないの嫌いか?」
静果は身の危険を感じたので、話題を変えた。
「それ、新作?」
「ああ」
「あたしも、ラブソングみたいな小説書きたいな」
「動画にしにくいな」
「ぷっ。ロマンない」
火竜はパソコンを閉じると、静果を見つめた。
「ロマン飛行したい」
「ヤダ」
「何だこいつ」
「だって、やめてってほうが燃えるんでしょ?」
「だからそれはドエス魔人だって」
「モデルは自分でしょ?」
火竜が立ち上がったので静果は慌てて両手を出した。
「待って、もう少し話していたい」
そう言われると弱い。火竜はソファに戻った。
「静果」
「ん?」
「いい脚してるよ本当に」
「ヤらしい」静果は嬉しそうに脚を触った。
「静果は、最高に魅力的だよ。かわいいよ」
「何言ってんの」
静果は照れ隠しに水割りを飲みほした。
甘い夜。刺激的な夜。大人の時間。
これからどんなラブソングを奏でてゆくのだろうか。


END

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