《MUMEI》
オドロキ
「‥‥‥妖精‥?」

「うん。しかもね、王子なんだって」

私が話すと

紫苑は怪訝そうな顔をした。

「夢を見たのではないのか」

「ほんとだって、ラロっていう妖精。今あたしの家にいるんだから」

「また何か空想でもしていたのだろう?」

「違うってば、ほんとに‥」

「気は確かか」

「ぇ‥?」

「そのようなものが存在する筈──」

「あるよ?」

「!?」

ラロが飛び出して来て

紫苑は目を見張った。

「な‥」

「ふうん、キミ、紫苑っていうんだ?」

「そうか、お前が‥」

「そうだよ♪」

「なるほどな」

「ね、夢なんかじゃなかったでしょ?」

「そのようだな」

「‥紫苑?」

「済まん、少し頭を冷やした方が良さそうだ‥。オレはこれで失礼する」

「あ、うん‥バイバイ」

ラロの存在は

紫苑にとって

ほんとにオドロキだったみたい。

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