《MUMEI》
志貴の観察眼
部屋に入ると、すぐに柊がサイトウとのやりとりを俺に報告し始めた。


(そんな所にまで来てたのか)


俺が行けなかった明皇高校文化祭に現れた、弘也かもしれない、サイトウ


柊の報告を聞きながら、俺は無意識に膝に置いた拳を強く握りしめていた。


更に


「あの体型は、三十代にしては若すぎる。

元々か、わざとそうしてるかわからないけど

老けて見えても、サイトウは二十代だと思う。

祐也は、二十代で身長と見た目普通、黒髪・前髪長めで口調が上から目線というか…嫌味な感じの男に、心当たり、…ある?」


現場にいた志貴


一目見ただけで、体型がわかる特技


そして、観察眼のすごさに


(…弘也以外考えられないな)


俺は無言で頷いた。


(そういえばあの時も前髪長かったな)


俺が襲われた時


弘也の顔が近付いた時


唇より先に、前髪が俺の顔に触れて気持ち悪かった。

(前髪下ろしてたから、ほくろわからなかったし)


オールバックは


(拓磨でも、年上に見えたしな)


俺は、去年の夏休み


志貴の誕生日を祝う為に気合いを入れてオールバックにした拓磨の姿を思い出した。

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