《MUMEI》

「なんらかの形で、安西は償わなきゃいけないのかもしれない。でもそれは、死では表せない。安西が生きて探さなきゃ……そうすれば俺は安西を初めて許せるんだ。」


「……安西に戻ってる。」

口許をつい、押さえてしまう。

「先輩にとっての俺は安西なんですね。」

小さく溜息をつかれた。


「知らない感覚が沢山あった。安西と対峙して知ったんだ。」

気付いた、に近い。


「そうやって、いい俺だけで満たしてて下さい。俺は後輩で、平凡な高校生……で、いさせて下さい。」

安西の指先が、鎖に一瞬触れた。
何と無く、死ぬよりももっと辛そうに見えた。

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