《MUMEI》
邂逅
天界には今日も清々しい風が吹いていた。
創世神の住まう白亜の城、白で統一されたカーテン、柱や壁面に金や銀で施された美しい装飾が城をより荘厳なものにしていた。

その廊下をティーセットを銀色の盆に乗せ、早足で歩く天使が一人、

「思ったよりも時間をとってしまったっ…!」

焦りの言葉に眉間にシワを寄せる天使は天界にあっては珍しい黒髪黒眼だった。
「オレとしたことがスコーンを焦がしてしまうとはっ。」

そのままの早足で廊下の突き当たりを曲がり、その突き当たりにある扉の前で彼は止まった。

白蝶貝のような光沢を放つ扉には金で六枚の翼を持つ天使が描かれていた。

その扉の前で一呼吸し、息を整え彼は扉をノックした
―コンコンー

返事はない

―コンコンコン―

首を傾げ、もう一度叩くが返事がない。

「ティアラ様?」

部屋の主の名を呼ぶが返事はない。

「失礼します、サマエル入ります!!」

扉を開け入室したサマエルは瞬間脱力した。

「いらっしゃらない…」

部屋の主であり自身の主でもある天使は影も形も気配すらなかった。

「今度は…どこへ……」

ティーセットを机の上に置き、頭を抱えながら部屋を出た。

深いため息をついた後、彼はキッと顔を上げた。

「まずはあそこからですね…。」

そう呟き早足で彼は廊下を歩き出した。

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