《MUMEI》

紅茶の支度をしようと思ったら‥キッチンの前で、森下さんが僕を呼び止めた。





「篠河君、まだ何とかなるわ──バレンタインに勝負賭けましょう」

「ぇ‥‥‥でももう‥婚約は決まって‥」

「挙式までまだひと月あるもの。バレンタインにちゃんと告白して、お嬢様に篠河君の気持ち分かって頂かないと。──ね?」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「篠河君‥?」

「分からないんです、どうするべきなのか──‥」

「正直な気持ちをぶつけたらいいのよ」

「‥僕は花禀様にふさわしくありません‥。森下さんも本当は‥そう思ってるんじゃないですか‥?」

「──まさか」

「告白はするつもりです、でも‥‥‥どうなるかは分かりません」

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