《MUMEI》
弘也との関係
「サイトウさんと、祐也は、どんな関係…なの?」


志貴は少し躊躇いがちに訊いてきた。


「忍の上司の息子で、一度だけ会った事がある」


(間違ってない、よな)


間違っていないし、事実だが


何となく、罪悪感を感じて俺は二人を見れなかった。


「その時…何か言われたり、されたりした?」

「…」


『ペットだと言われ、殴られレイプされた』


(…なんて、言えない)


「祐也は、サイトウさんをどう思ってる?」

「嫌いだ」


柊の質問に、俺は即答した。


「大嫌いだ…」


もう一度続けた言葉は答えというより独り言に近かった。


「「…」」


志貴と柊はそんな俺をしばらく黙って見ていた。


俺は、視線を受けながらも、顔を上げられずにいた。


「…思い出したくないんだ。これ以上、訊かないでくれ」


(知られたく無いんだ)


特に、純情な志貴と柊には。


「…頼む」


俺は相変わらずうつむいたまま、頭を下げた。


「祐也」


柊の口調は優しかったが、俺はまだ顔を上げられずにいた。

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