《MUMEI》
二章:零
 お月様は悲しくて泣きました。
離れ離れになってしまった兄を想い、追い掛けても追い掛けても届かぬ兄を憎み、お月様は独りぼっちの自分を嫌ったのです。
 独りから抜け出そうと、お月様は玩具を探し始めました。
けれど、玩具は脆くてすぐに壊れていきます。
一緒に遊べば遊ぶ程に玩具は弱っていくのです。
お月様は玩具が壊れる度に新しい玩具を探しに下界にと降りて行くのでした。


 お月様は、ある人間を気に入りました。
その人間は、とても優しくて色々な遊びを教えてくれたのです。
それからというもの、お月様は毎日のように人間と遊びました。
その時間はとても楽しいものでしたが、やがて人間は大人にとなり、お月様はまた独りぼっちになってしまったのです。
 お月様は悲しみました。
皆が自分から離れていく、と嘆きました。
そして、深い怒りも覚えたのです。
しかし、怒りの矛先がないお月様は途方に暮れました。
暫く考えた末に、人間を新たな玩具にすることに決めたのです。


 お月様、お月様。
泣かないで?
鬼ごっこ、かくれんぼ。
好きなもので遊んであげる。
走って、隠れて、捜して。
ねえ、楽しいでしょ?


鬼さん、だぁれだ?

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