《MUMEI》

「もしかしたら──お嬢様は篠河君がお好きなのではと思ってたんです──ですがこの度、神山先生とのご結婚が正式にお決まりになったので」

「っ‥‥‥」

「好き、なんですよね? 本当は──神山さんではなく‥‥‥篠河君が」

「‥そんな‥‥‥事っ‥」

「今からでも遅くありません、ご主人様や奥様も──お嬢様の本当のお幸せを願ってらっしゃいます。どうか‥」

「──ふざけないでよッ!」





窓が‥震えた。





「いい加減にしなさいよ‥‥‥」





‥握り締めた拳が‥震えている。





「‥‥‥私は篠河なんか‥何とも思ってないから‥」

「──お嬢様」

「出てってよ‥」

「宜しいんですか‥?」

「いいから出てってよッ!」

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