《MUMEI》

‥挙式当日。





「──お嬢様──そろそろお出かけのお時間です。お嬢様‥?」

「どうしたんですか、森下さん」

「お嬢様‥出て来られないの」

「ぇ‥」





昨晩、花禀様が仰られた事が頭を過ぎった。





『──分からなくなっちゃった』





‥まさか‥。





「花禀様っ、いらっしゃいますか花禀様っ」

「──何よ、支度ならもうとっくにできてるわよ‥?」

「花禀様──‥」





万一の事があったらどうしようかと‥。





「行きましょ。──篠河、あんたが運転して」

「はいっ‥畏まりました」

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