《MUMEI》

物凄い剣幕で詰め寄ると、竹内さんはオロオロと電柱の影に隠れ、一方の倉澤はため息まじりに言ってきた。


「落ち着けよ、シャッター塗るの手伝うからさ」


「塗り替えは自分でやるわよ!!それよか、メッセージを早く解読しなさいよッ!!」


「出来るわけないじゃん、俺はエスパーでもFBIでもねーんだから」


悪びれず答える倉澤に、わたしはア然とする。返す言葉すら見つからない。

倉澤はそんなわたしを放置して、袋からペンキを取り出した。

それからわたしの顔を見て、眉をひそめる。


「早く、ハケ、持ってこいよ」





……………だっ!!



騙されたぁぁぁぁッ!!!
















わたしはハケを使って、シャッターにペタペタとペンキを塗りたくりながら、考えていた。





…………あーぁ。



なんで、わたしってこうなのかな。



相手が言ったことを、



疑いもせず、



すぐに、信じちゃうの………。



毎度のことながら、ホントに嫌になる。





あーぁ……………。





もっと、賢くならなきゃなぁ−−−−。











「………手、止まってんぞー」





無愛想な《彼》の声が、すぐ傍から聞こえた。

わたしはその《彼》を、半眼で睨みやる。

《彼》は、わたしの冷めた視線に気を悪くしたのか、「なんだよ??」と突っ掛かってきた。


「睨むヒマがあったら、さっさと塗れよ」


《彼》−−−倉澤はハケを振り回しながら、わたしに指示する。


わたしはしばらく倉澤をジーっと見つめ、それから聞こえよがしに大きなため息をついた。


「なーによ、エラソーに……嘘ばっかついてさ〜、審美眼??笑っちゃうよね、マジで」


シャッターを塗りながら、ぶつくさと文句を言ってやった。

倉澤は耳聡く、「なんか言ったか??」と尋ねてきたがわたしはムシした。

そんなわたしを見て、倉澤は呆れたようにため息をつく。


「そんなに怒ることか〜??お前、ジョーダン通じねーのかよ??」


わたしはムッとした。

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