《MUMEI》
ある夏の日に
.







−−−高校3年の夏休み。







将来、なにをやりたいのか。


どんな、大人になりたいのか。




遠い未来のことなんて、




ちっとも想像出来なかった、あの頃………。








…………俺は、









キミに出会って、








ようやく目覚めることが、出来たんだ−−−−。












◇◇◇◇◇◇









とにかく、暑い夏の日だった。



炎天下の中、俺は吹き出す汗を拭いながら、地元の駅を目指して歩いていた。

地面に広がる真っ黒なアスファルトは、太陽から放たれる大量の熱を含み、光を容赦なく、俺に向かって照り返してくる。





…………あっちー……。





あまりの暑さに、思わず毒づく。本気で気が狂いそうだ。

しかも、これから予備校へ行くのだと思うと、憂鬱で仕方なかった。





進路なんか、決めていない。


大学に行くのか、専門学校へ進むのかすらも。


興味がなかった。


目に見えない、未来のことなんて、


真剣に考えても、


意味がないような気がしていた。



それでも万が一に備えて、クラスメートたちの真似をして予備校の夏期講習を申し込んだのだが………。





……………だりー。


こんなんだったら、


ヘタな真似するんじゃなかった………。





−−−高校最後の夏休み。


………始まってから、まだ3日。


俺は、早速、後悔していたのだった。



ハイクラスの講師陣によるハイレベルな授業。

模試の結果に一喜一憂する、単純な予備校生たち。



−−−すべて、面倒だった。





あーぁ、


マジだりーな………。


今日、講習サボろっかなー。





そう考えていたとき、



近所の公園にさしかかった、



俺の朦朧とした視界に



不意に、そのひとが、うつり込んだのだ。





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