《MUMEI》 「──ちょっと葵っ、いつまで籠ってるのよ出てきなさいっ」 キッチンの扉の向こうから、花禀様がしきりに‥僕に呼び掛けてらっしゃる。 「ねぇってば!」 「───────」 後‥もう少しで完成だ。 「よしっ──」 ──出来た。 「聞いてるー!? ──わッ」 「ぁ、済みません‥」 「何してんのよ朝っぱらから‥」 「──花禀様」 「何‥?」 「目を──つむっていて頂けますか」 「‥は?」 「ほんの少しの間でいいんです──お願いします」 「──‥しょうがないんだから‥」 と仰いながら、花禀様は目をつむって下さった。 前へ |次へ |
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