《MUMEI》

「‥‥‥まだ‥?」

「──宜しいですよ」

「───────」





瞼が、ゆっくりと開く。




「‥ぇ‥‥‥何これ‥」

「お返しです。チョコレートの」

「へっ‥?」

「──どうぞ、お掛けになって下さい」

「‥‥‥あんたが作ったの‥?」

「──はい」

「‥この形‥‥‥あの絵本に出てたお菓子の家にそっくり‥っていうかまんま‥」

「──召し上がってみて下さい」

「バカ‥‥‥」

「ぇ」

「食べられないわよ──」




──涙。





と‥笑顔。





と‥笑顔。





「こんなに‥可愛い家‥‥‥食べれる訳‥」

「またいつでもお作りしますから」

「ほんと‥?」

「はい、勿論です」

「‥‥‥じゃあ‥」





色白の手が、遠慮がちにお皿を引き寄せた。





「どこから食べればいいの‥?」

「どこでも──お好きな所から」

「‥‥‥‥‥‥‥」





クッキーの煙突を外して、ひと口。






「──美味しい」

「ぇ」

「ほら、あんたも食べて」

「‥?」

「いいから」

「──はい」

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