《MUMEI》

「な、和正は、曲つくらないの?」
「んー?歌う専門?」

軋みながら、電車が止まる。

「つくれば。俺、和正の曲聞きたい。」
「無理!俺、優也みたいな才能ないから。」
「簡単だって。今、言いたいことを、メロディーにする。」

な、簡単だろ?

そういって、優也は肩をすくめてみせる。
いや、それがムズいんですけど。
ゆるく笑ってみせて、改札を通りぬけた。まだ、もう少しのあいだ、帰り道は同じ。
もう少しのあいだ、優也と一緒にいられる。

「つくれって。」
「やだ。」
「ケチ。」
「どこがだよ。だいたい、言いたいことなんてないし。」
「・・・じゃあさ。」

優也は、小さく首をひねって、俺を見下ろす。

「俺に言いたいこと、歌詞にすれば?」

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