《MUMEI》

かばんを、落とすところだった。

「はぁっ!?」
「うん、そうだって。俺にささげる歌、つくればいいじゃん。」

満足そうに微笑んで、優也は歩道橋に足をかける。

「いや、言いたいこととか、マジでないから。」
「いやいや、長い付き合いじゃん。あるだろ、一つや二つ。」



あるよ。
すごい言いたいこと、あるよ。
でも、そんなの、言わないほうがいいにきまってんじゃん。


すっかり歌わせる気の優也に、何も言えなくて。
しかたなく、唇を開いた。

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