《MUMEI》 弘也からの呼び出し《裏門に来い》 その言葉を最後に、守の携帯は切れた。 (今の声) 守じゃない、男の声。 その前に聞こえた、守の焦った声と 一緒にいる、吉野の悲鳴。 「おい!祐也どこに行く!」 「守に会いに行く。あいつ迷子らしいから、すぐ戻る!」 俺は一人で走り出した。 (間に合え!) 裏門の位置は、柊からもらったパンフレットを見てわかっていた。 (弘也と会ってたんならそう言えよ!) 見えてきた裏門には、正門程ではないが、それなりの人数がいた。 その中には、俺のファンクラブの会員もいたようで 彼等は汗だくで走ってきた俺に、目を丸くしていた。 「…心配無い。守に会いに来ただけだから」 俺の視線の先には、確かに守が 一人で立っていた。 「守。吉野はどこだ? 会わせてくれよ」 「…祐也」 「早く。志貴が心配するから」 俺は、立ち尽くす守の肩を抱き 「大丈夫だから。サイトウがいるんだろ?」 そう囁くと、守は震えた。 「祐也、俺、違うと思ったんだ。京都で見かけたサイトウと、ストーカーサイトウが同じなんて…」 「いいから」 俺は守と裏門を出た。 前へ |次へ |
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