《MUMEI》 「……ふう、もう追いつけないだろう。」 全速力で漕いだので足が痙攣する。 自転車に鍵を掛けて横付けしておく。 「誰が追いつけないって?」 不意に、聞き覚えのある声がする。 「七生……」 「頭きたって言ったよ?」 血の気が失せる。 自転車に追い付く超人体力に驚く。 「おやすみなさい」 自然と体は家に帰りたがっていたが、七生は距離を詰めて玄関を遮る。 「だめ、連行。」 七生が俺を軽く持ち上げてほぼ引きずるように、隣の柊荘まで運ばれた。 「痛い!」 土足で、暗がりの中、固い床の感触がする。 七生の走って汗ばんだ膚がぶつかる。 前へ |次へ |
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