《MUMEI》
序章:電話
瞬きを繰り返しながら受話器を受け取るもイマイチ状況を把握仕切れない。
そんな榛伊に苦笑を浮かべて神田が頭を掻いた。
「まあ、良く解らんが急ぎの用らしい。出るだけ出とけ」
神田の言葉に一応の納得をみせ頷いて、受話器を宛てた。
「もしもし、坂中ですが」
「あ、どうも。私、萩署の埖と申します。宇津井千波――旧姓坂中千波さんの弟さんでしょうか」
埖と名乗る若い男性の声が告げた名前は、榛伊の日常を壊すに足りた。
 この時から、波乱は始まっていたのだろう。
埖の用件は、榛伊の甥を引き取りに来て欲しいというもので。
飽くまでも淡々と答えを返し受話器を置いた榛伊だが、内心は複雑そのものであった。


電話/END

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