《MUMEI》
知っても意味の無い事
      =翌日=


「柊〜!」

「…あら、月代君。お早う。
 何か用かしら?」

「お前、昨日 直哉と美雪に
 会ったんだって?」

「直哉君と美雪ちゃん?」

「俺の弟と妹だよ」

「あぁ!会ったわよ。それが
 どうかしたの?」

「家の場所、何で俺に直接聞か
 なかった?」

「ふと思い付いた事だったから よ。そこに、月代君が見せて くれた写メの二人が通ったか ら、ちょうどよかったの」





ふと思い付いたとこに直哉と美雪がちょうどよく通った?そんな巧い話、誰が信じる?
それに…





「俺に用事があるなら、学校で いいはずだろ?何でわざわざ 家の場所を聞いたんだ?」

「ん〜、月代君に用事っていう か、家族にっていうか…」

「…どういう事だよ?」

「まぁ、そのうち分かるわよ。 それより、授業が始まっちゃ うわよ」

「おい!そうやって話を勝手に 切り上げるの、もうやめろ」



俺は'今度ばかりは勝手に行かせるか!'と思い、柊の腕を掴んで引き止めた。


俺だけならまだしも、家族まで関係してくるなら尚更聞き出すべきである。





「柊、俺はもう誤魔化されない
 からな」

「……離してくれる?」





そう言って振り向いた柊の顔は、恐ろしく冷たかった。


柊の見たこともない表情に、俺は思わず息を呑んだ。柊は、そんな俺に





「世の中には、知っても
 意味の無い事もあるのよ」





と静かに言い放ち、俺の腕を振り払って教室へと行ってしまった。








怖い…








この日から俺は、柊が転校してきたあの日のように、彼女に対して恐怖を抱くようになっていた。

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