《MUMEI》
4.平穏な時間
4.平穏な時間

香「よくも、よくも安野さんを…許せない!!」

伊井 香 は立ち上がって男を睨みつけた。
その表情は般若の様に恐ろしいものだった。
男は、伊井 香 の表情に竦み上がって動けなくなった。

男「な、な、なんだ。な、なんなんだ。お、お、お前は…お、お、俺様は神だぞ!お、お、お前なんか怖くないんだから…お、お、俺様が作る爆弾で吹っ飛ばしてやるから…」

突然、風が吹き出した。
伊井 香 の髪が乱れて風に舞っている。
伊井 香 から風が吹いているのだ!
さっきの般若の表情からは一変して今度は雪女の様に妖艶で冷血な表情をしている。
凍えるほど冷たい風が吹き出した。
男はブルブルと震え出した。
そして伊井 香 は声にならない叫びを男に放った!
男は、その声の波動で吹っ飛び壁に激突した。
そのまま壁に減り込んでいく。
男は激痛に苦しみながら恐怖に震えていた。
このままでは壁に減り込んで押し潰されて死んでしまうと思った。男は必死に壁を触り爆発させようとした。が、伊井 香 の波動は強く男は何も太刀打ち出来ないまま伊井香の力によって身体が壁を貫き外まで飛ばされた!

男「落ちる!!」

男は真っ逆さまに地面へと落ちていく。恐怖の絶頂だった!
男が、まさに地面に激突するその瞬間、時間が止まった!
伊井 香 は素早く階段を駆け下りてビルの外に出ると周りにいる野次馬達を安全な場所へて避難させ、再び6階へと戻った。
伊井 香 は安野 丈 を抱き抱えた。

香「お願いだから死なないで…」

そう言って安野 丈 に口づけした。
そして時間が動き始めた。
ビルの外で爆音が響き渡り大爆発が起こった。
男は地面に激突して、その上に男が爆弾に変える為の周りの壁が落ちたのだった!
爆発で男の体はバラバラに吹っ飛んだ!
暫く沈黙が続いたが、機動隊が6階の部屋に突入して来た。
それから警察官や救急隊も6階に入って来た。

爆発でバラバラになった男が犯人だと誰かが話している。
男が誤って自分で作った爆弾で爆発して壁を壊しビルの外に落ちて自爆したのだと話していた。
誰も伊井 香 の事は話さなかった。
伊井 香 が怖かったから話さなかったのではない。
みんな伊井 香 に感謝していたのだ。
特に小田 真理は伊井 香 を気遣っていた。

真理「事情聴取は私達でするから伊井さんは安野さんに付き添って病院に行って。」

香「えっ!?う、うん、あ、有り難う。」

伊井 香 は安野 丈 の付き添いで救急車に同乗して病院へと向かった。

松刑事「いや〜響刑部。本当に良かったっすね。
無事に事件が解決して。」

響刑部「全く本当だ!犯人がマヌケで本当に良かった!こんな事件には関わりたくないからな。」

松刑事「全くですね。危ない事件には関わりたくないですよ。」

響刑部「本当だ!本当だ!小さな事件を適当に追い掛けまわしてる方が俺には合ってるからな!」

松刑事「自分も同じですよ。」

響刑部「よし、事件解決!署に帰って適当に報告してメシでも食べに行こう。俺がオゴるから。」

松刑事「響刑部!本当ですか!マジで嬉しいっす!寿司っすか?ステーキっすか?」

響刑部「バカやろう!もっと安いモノに決まってるだろ!」

そんな会話をしながら2人は署に帰って行った。


一方、病院では安野 丈がストレチャーで運ばれていた。
そこへ若くてキレイな看護師が来た。

看護師「話は救急隊の方から聞いています。
私は看護師長の岡です。」

香「はい、お願いします。助けてくだ…岡…?」

伊井 香 は看護師長の岡を見た!
それは紛れも無く岡 絵理だった!

岡「安心して下さい。香さん。」

看護師長の岡 絵理は伊井 香 を見てニコリと微笑んだ。



つづく

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