貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》「酒」-3
しばらくすると、男は顔を朱に染めて昔話を始めた。
「もう十数年も昔、冒険者だった頃じゃ」
儂は旅先で知り合った仲間と共に、伝説の森の王が住むという「聖域」の噂を聞き、この地方へとやって来た。
当時は血気盛ん好奇心旺盛で、行くとこ全て怖いもの無しだった…
キンジュの森は素晴らしい場所だった。
古代機械を利用した技術が世に広まり、森林が開発されていく中でまだこんなにも美しい自然が残っていたとは…と
まるで、母の胸の中で抱かれているような暖かさがあった。
だが、そこは儂ら人間が立ち入ってはならぬ場所だったのだろう。
森の番人という巨大な猫…
儂らは「フィンク」と対峙した。
今でも、あの眼光を思い出すだけでゾッとする…
「…………」
思い出した。
戦ってきた人間の中で、唯一傷を付けた男の事を…
「結局、儂以外の仲間は喰われてしまった、儂は自分の無力さを呪ったよ」
残っていた酒を、ググッと飲み干す。
強いすきま風が、ランプの明かりを消し、闇に染まった。
「フ…お前、これからどうするつもりじゃ」
闇の中、静寂
「霧の魔女を、探す」
その言葉に、男の表情が変わったように思えた。
「霧の魔女…か」
しばらくして、男はゴソゴソと動いてこちらに何かを投げた。
…コインだ。
「それを酒場のマスターに見せるがいい」
「霧の魔女と関係があるのか?」
「さぁ…そこからは、お前次第じゃ、フィンク」
更に強い風が吹く
男は最後にこう言った。
「確かに渡したぞ」と
月明かりに照らされた部屋には、ただ俺1人と、ほのかな酒の香りだけが残っていた。
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