《MUMEI》
俺のこと
.


昔から、そうだった。



俺は、





面倒なことが、大嫌いだった。





…………たとえば。



真面目に将来を考えるとか、



目標に向かって頑張るとか。





要するに、



目に見えない努力をすることが、



苦手だった。





そんなもん、ムダなだけだと、



ちゃんと向き合わず、



目の前の現実から、





逃げてばかりいた。





高校に入って、



たくさん仲間ができて、



一緒にバカやって、



笑い合って。





でも、





それが崩れ始めたとき、





俺はまた、





逃げだしたんだ−−−−。





メシを食い終わって、俺たちは店を出たときには、外は暗くなっていた。

駅に向かおうとしたさなか、のぞみが思い出したように、「あッ!!」と声をあげた。俺と登は振り返る。

のぞみは肩にトートバッグをかけ直しながら、言った。


「先生に質問したいことあったんだ!!わたし、予備校に戻るね!」


「バイバイ!」と、明るく言うなり、彼女はヒラリと身を翻して、俺たちと別れて颯爽と立ち去った。

残された俺と登は、のぞみの後ろ姿をしばらく見つめ、それからダラダラと駅に向かって歩きはじめた。


「真面目だなー、のぞみ。質問なんて、明日でいいのに」


歩きながら、ぽつんと呟いた登に、俺は、そうだな、と頷いた。登はのぞみの話をつづける。


「知ってる?あいつ、結構モテるんだぜ。頭いいし、性格もサバサバしてるし、顔も悪くないから。最近、予備校の奴にも人気があるんだ」


興味がなかったから、気づかなかっただけなのか、そんな話は聞いたことがなかった。

俺がテキトーに、そうなんだ、と答えながら、今日はやたらとのぞみの話をするな、と思った。

登は、ため息をついた。


「ほっといたら、きっとすぐに彼氏出来るんだろうなー」


登の呟きに、なんと返せばいいのかわからなかった俺は、返事をしなかった。


.

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