《MUMEI》
相談
不安と恐怖に堪えきれなくなった俺は、その週の土曜日に智と椋に相談することにした。




「――ってなかんじで、何かと
 俺に質問してきたり、意味の
 分からない事を言ったりする
 んだよ」

「何それ!?黎夜ずるくね!?俺だ
 って海帆ちゃんと色々話した
 いのにさ〜!」

「椋、黎夜の話ちゃんと聞いて
 たか?柊は明らかに不審人物
 だよ。行動がおかしすぎる」



頬を膨らまして空気の読めないことを言う椋と、状況をしっかり理解したうえで発言する智。俺は、智だけでも自分に同意してくれたことに安心する。




「やっぱ、智もそう思うだろ?
 椋だけだよ。不信感ねぇの」

「え〜!黎夜も智も考えすぎな
 だけだろ?」

「違うよ。椋は、自分からふっ
 た話題をそんなに何度も勝手
 に切り上げるのかよ」

「それは…」

「話を勝手に切り上げる事があ
 るにせよ、話題がおかしな事
 だらけだ」

「う〜ん、海帆ちゃんは黎夜が
 好きなのかもよ」

「はぁ?今までの話から何でそ
 うなるんだ?」

「え〜っと、それはだな…。
 …なんとなく」

「椋、お前が柊を信じたいのは
 分かるけど、黎夜の話を聞い
 てあいつを普通だと思う事は
 できない」

「けど、だからってどうするの
 さ?俺や智は当事者じゃない
 からどうしたらいいのか…」

「いや、俺は二人に助けてもら
 いたいんじゃなくて、ただ話
 を聞いてほしかっただけだか
 ら。別にいいよ」




苦笑いしながらそう言う俺の横で、智は何か考え込んでいる。



「智?」

「…でもさ、俺は何か言い表せ
 ないような不安がある」

「え?それってどう…」




言葉を言い終わらないうちに、俺の携帯からバイブ音が聞こえた。




「わりぃ、電話だからちょっと
 待ってくれ」

「おう」

「…もしもし。
 はい、そうです……


 ――― え?
 …はい、分かりました。
 ……直ぐ行きます」




俺は、切ったばかりの携帯をただ呆然と見つめた。




「黎夜?どうした?」

「………」

「黎夜?」

「…うちに……トラックが…
 突っ込んだって…」

「え!?家族は?無事なのか!?」

「…リビングに突っ込んだらし
 くて…詳しい事は病院に行か
 ないと……分からないんだ」

「なら、急いで行くぞ!!椋、俺
 達も着いてくぞ!」

「わ、分かった!」

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