《MUMEI》
形勢逆転
「藤堂さんにも連絡取れましたから。

二時間後にはここに来るそうです。

だから

今のうちに、言いたい事言っておいたら?

殴りたいならそうすればいいし。私はただ見てるから」


そう言って、志穂さんは部屋の隅に移動し始めた。


「じゃあ、そうします」


俺は弘也の正面に立った。


「な、何だ。お前、俺に敵うと思ってるのか?」


弘也はゆっくりと立ち上がった。


「思ってるよ」


バキッ


「グッ!?」


俺の拳が弘也の腹部に直撃すると、弘也はその一撃で言葉を無くし


再び、倒れた。


「もう、俺に近付くな」


俺は弘也に跨り、首に手をかけ、脅した。


「俺が、俺がいなくなっても、お前が変態のペットだった事実は無くならないぞ!

そんなお前を受け入れる人間なんているもんか!」

「黙れ!!」


俺は弘也の首をしめる為に力を込めた。


(こいつは殺さなきゃ

こいつが死ななきゃ

俺が、…ダメになる

志貴や皆との今までが、壊れる)


そんな想いが、今の俺を支配していた。


「殺すのはダメよ」


そんな志穂さんの声は俺には届かなかった。

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