《MUMEI》
一章:新学期
「おっ、横暴なんて良く知ってるな。……黙れ、忙しいんだ、俺は」
安津のフリーハンドで地図が描かれていく。
白い紙に世界が出来上がる様を見詰めているのは、意外と楽しかった。
「よし、描けたぞ。迷うなよ? それと、無茶はすんな、良いな?」
安津から描き終えた地図を渡される。
彼はペンを片付けながら不思議な台詞を零した。
「粟冠の家に行くだけじゃん。無茶ってどんな無茶だよ?」
「……車に気を付けろってことだ。ほら、さっさと行け。明日は遅刻すんなよ、遅刻魔」
安津に肩を押される。
厭味ったらしく告げられた台詞で職員室を追い出されるのだった。


 まだ、オレは知らない。
オレの世界を覆すことになる出会いが待ち構えていることなど、知る由もなかった。


新学期/END

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