《MUMEI》
届く声
《ダメー!!! 祐也!》

《そうだよ祐也!ほら、祐も!》


《母さんいるから大丈夫だろ》


《いいから…て》


《祐也!せめて半殺し!》

《頼、順番守れ!》


《次俺!厳だよ祐也!わかる!?》


《余計な事は言うなら返してよ!私の携帯!!とにかく祐也!ダメだからね!》

《そうだぞ祐也!》

《半殺しだぞ!》

《母さんの言う事聞けよ》

《俺、厳だけど、落ち着けよ!》

《あ、希喋って無い!》

《エイミーも!》


その後も緊迫した空気の中、段々と低レベルになっていく会話が


特に、志貴と柊の声が


志穂さんが持っていた携帯から


俺の、耳に届いた。


気付いた時には俺の手は弘也の首から離れていた。


「もう、大丈夫よ。じゃあ、一旦切るから」


電話の向こうにいる皆にそう告げて、志穂さんは携帯を閉じた。


「田中君ももう大丈夫?」

「…はい」

「皆、心配してるのよ」

「はい」

「ところで、お腹すかない?」


(…え?)


グー…


言葉より先に、返事をしたのは俺の胃袋だった。

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