《MUMEI》 最初の悲劇病院に着いた俺達が見たのは、痛々しい家族の姿だった。 直哉も美雪も、包帯で頭や手足などをぐるぐるに巻かれて眠っていた。母さんは、多くの包帯を巻いていたが一番軽傷なようだ。 父さんは…咄嗟に家族を庇ったのだろう。 まだ意識が戻らないらしい。 命に別状はないとの事だが、心配で仕方がない。 事故の原因である、トラックの運転手は、明らかに動揺していた。 俺は被害者の家族である事を告げ、話し掛けてみた。 すると彼は、警察が同行するという条件付きで許可をもらい、俺の家族の容体が心配で病院まで来たと言った。 そして、俺に謝罪するとともにこう告げたのだ。 「ハンドルが勝手に動いた。 ブレーキもきかなかった」 ……『有り得ない証言だ』 と思った。 ハンドルが勝手に動いた? ブレーキがきかなかった? そんな事、誰が信じるんだよ。 下手な言い訳をする運転手に腹が立ったが、俺にはどうすることも出来なかった。 取り敢えずは、病院と警察に全てを任せるしかない。 俺は、暫く家族を見守った後に智達と病院をあとにした。 「ったく、何だよあの運転手!! ハンドルが勝手に動くわけ ねぇだろーが!ムカつく!!」 「だよな!黎夜の前で、よくあ んな言い訳ができるよな!!」 「…二人とも、落ち着けよ。俺 だって腹は立つけど、家族が 無事ならそれでいいからさ」 「…そう、だな。……なぁ、 黎夜。今日は俺んちに泊まら ないか?」 「お、それナイスアイディア!! 家が直るまで、智んちに泊ま らせてもらえよ♪俺も泊まる からさ☆」 「何で椋まで泊まんだよ」 「だって俺、仲間外れなんて やだもん」 「ガキかお前は…。んで、黎夜 はどうする?」 「……お願い…しようかな」 「よしっ!そうと決まれば早く 家に帰ろうぜ」 「あ、じゃあ、智の家まで競争 なっ!よ〜いドン!!」 「あ、こらっ!椋!!卑怯だぞ!! 勝手に始めんな!」 「黎夜も早く走れよ〜!」 「あ、あぁ」 俺の気分を紛らわすために、わざと明るく振る舞ってくれる智と椋。俺は、そんな親友達に感謝の気持ちを込めて「ありがとな」と呟いてから、二人の背中を追って走った。 前へ |次へ |
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