《MUMEI》
一章:出逢い
彼女は顔面蒼白で、化け物を見るようにボクを凝視する。
目からは、既に生気が消えていた。
笑いが止まらない。
不思議と愉快な気持ちが止まらない。
どうしてだろうか、と冷静に考えようとする自分は、波に呑まれて消えていく。
ただ狂った行為にボクは没頭して、刃を彼女に向けた。
息が切れる。
上手く呼吸が出来ない。
覚醒を果たした体をゆっくりと起こした。
まだ肌寒さが残ると言うのに、汗で寝間着が濡れている。
乱れた息も整わないままで、ボクはベッドから下りる。
箪笥から着替えを出して身に纏った。
濡れた寝間着は洗濯物籠に入れる。
「な、んで……ボクは」
それ以上の言葉は出てこなかった。
唇を噛み締めて脳裏に残る残像を追い払うように左腕の包帯を解いていく。
ガーゼを外し、幾筋もの傷が走る腕を見詰める。
まるでボクの罪を咎めているかのように亀裂は走っていた。
苦しみは苦痛で緩和させる。
ボクはそれしか知らない。
沸き起こる衝動が自傷行為を望むから。
衝動のままに傷口に爪を宛てた。
引き裂くように指を引いていく。
止めることなど出来やしない。
腕を襲う痛みに目を綴じる。
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