《MUMEI》

「俺をそんな風に思ってたんだ……?」

七生の口からそんなこと言われるなんて。


「ちがう、」


「本音が出た。」

指摘してやる。


「……はは、馬鹿みたいな、俺達……口にすればするほど擦れ違う。それなら、体に聞けばいい。」

七生が笑い始める。
俺は七生に触れられ、服を着ていないことに気付く。




「槙島には、何をされた?」

詰問タイムだ。


「椅子にくくりつけられて、手錠を……」


「手首に?」


「そう。」


「……痩せたんじゃない?」

手首に唇が触れたまま七生は話す。


「……そう、食べたんだ、パンと……」

苦いものが口から込み上げる。


「パンと?」

思い出すと涙が出て来る。


「パンと……蜘蛛」

凄く、嫌だった。
悔しかった、嗚咽が漏れそうだ。


「多分、俺の舌の方が美味しいよ、食べてみ?」

七生のキスは
……そんなものを溶かしてくれる?
七生の舌は
……チョコレートみたいに甘い?

噛んでみた、
舌は
俺のぐちゃぐちゃな気持ちを楽にしてくれた。

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