《MUMEI》

確認する七生は、俺の記憶と傷を解いてゆく。

俺はそんな七生の感覚に委ね、七生の触れる肌に溺れてゆく。


「安西は、二郎に酷いことした?」

酷いこと、とは
具体的にはなんなのだろう。
根本的に傷付けていたのは俺かもしれない。


「安西は酷くない。きっと、俺が悪いことしたから返ってきたんだ……」


「もうさ、そうやって逃げるのやめれば?
自分のせいでって言って終わらせて、そんなの優しさでもなんでもない。
怒ればいいじゃん、安西にも槙島にも俺にも、逆らってみたら?
ホラ、安西に脱がされたんだったよな。それから肩を刃物で切られた?」

両手を繋がれて、天井に向かって挙げるので背中が浮いた、肩の傷を指で突く。


「イッ……!」

刺激に反応してしまい、屈辱だ。痛覚は以前に増して敏感だ。


「そうやって反応してると自分が二郎を悦がらせてるって、勘違いする。安西にはされた?脱がされてまさか、何も無いとは言わせないからな?」


「…………」

答えたくない。


「強情だな。俺を試してる?でももう俺も優しくしてやらない。」

七生に俯せにされた。

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