《MUMEI》
疑問だらけ
「とりあえず、弘也君にはこの中にでも入っててもらいましょう」


(…『君』!?)


似合わない表現に目を丸くする俺は


志穂さんが何故弘也の名前を知っていたのか、という問題に気付けなかった。


「田中君? 手伝って」

「あ、はい」


それから俺は弘也の上から退き


志穂さんと二人がかりで弘也をガラス張りのシャワー室に入れた。


ガチャッ


「これで、よし」


志穂さんは慣れた手つきでポケットから出した鍵をかけた。


このシャワー室は、実はコテージにある寝室の一部にあり


ガチャッ


「一応、ね?」


そう言って、志穂さんは別の鍵を取り出し、寝室の鍵もかけた。


それから、スタスタと台所に移動し


「とりあえず、これ」


冷蔵庫から取り出したゼリー飲料を俺に手渡した。





(慣れすぎ、てないか?)


受け取ったゼリー飲料を俺が一気に飲み干している間に、志穂さんはまた動き出し


「多分弘也君のだと思うけど、着替えてね」


どこかから、着替え一式を持ってきた。


「何か、未だにわけわかんないんですけど…」


志穂さんに背を向け着替えながら、俺は正直な気持ちを伝えた。

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