《MUMEI》
安心
     =月曜日=


今朝病院から、父の意識が戻ったという連絡を受けた。




「智!わりぃ、病院から連絡あ
 って、父さんの意識戻ったっ
 ていうから学校遅刻する」

「了解!担任には俺が言っとい
 てやるから、早く親父さんと
 こ行ってやれ!!」




俺は、学校へ行く準備なんかすっぽかして病院へと向かい、病室に駆け込んだ。




「父さん!!」

「おぉ、黎夜か。悪かったな。
 心配かけて」

「そんなのいいよ。もう大丈夫
 なのか?」

「あぁ、まだ退院はできないが
 もう大丈夫だ。安心しろ」

「……良かったぁ」




安心感からか、俺の瞳からは
知らぬ間に涙が零れていた。




「大丈夫だから泣くな。男がメ
 ソメソするもんじゃないぞ」

「……泣いてない!」

「強がんなくたっていいだろ。
 親子なんだからさ」




父さんは、微笑みながら俺の涙を拭こうとしている。俺はその前に袖で涙を拭き、嘘をついた。




「っ……強がってない!」

「分かった分かった。……あり
 がとな黎夜。こんなに心配し
 てくれる息子を持った俺は幸
 せ者だよ」




そう言った後、父さんの大きな手が俺の頭を撫でた。



――そういえば、小さい頃には
  よく頭撫でてもらったな




そんなことを思い起こしながら、心地よさと安心感に俺は瞼を閉じた。




「…黎夜、そろそろ学校に行っ
 た方が良くないか?」

「…んー、そうだな。じゃあ、
 そろそろ行くわ」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」




―― っと、行く前に母さん達
  のトコにもよらなくちゃな



見舞いに行くと、母さん達もだいぶ元気そうだった。

直哉は病院が退屈で仕方ないらしく、たまぁに抜け出しては怒られているらしい。




「直哉〜、あんま人に迷惑かけ
 んなよ?」

「分かってるよ。でも、本当に
 退屈なんだよ」

「ガキじゃないなら、大人しく
 寝てろ」

「はいはい、分かりましたよ。
 お・に・い・さ・ま」

「………」

「ごめんなさい!!本っ当にごめ
 んなさいっ!!もう生意気言わ
 ねぇから!!」

「…分かればいい。んじゃ、俺
 は学校行くから」

「行ってらっさ〜い」

「母さんも、無理すんなよ」

「そんなに心配しなくていいか
 ら、早く行ってらっしゃい」



俺は久々に幸せを感じた気がした。

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