《MUMEI》

老婆は大きく息を吐き、ガックリと両肩を下げた。


ゴクリ…

貴士は唾を飲む。


いつの間にか、老婆の話に聞き入っていた。

まるで昼ドラの様な、泥沼化された恋愛が、本当に存在するとは…


そんな浅はかな考えで聞いていたのだ。


「それで、その…どうなったんですか?ユウマ君は…」

続きが早く知りたくて堪らない。

その衝動を何とか制御し、さも深刻そうに聞き返した。


「そりゃ、大変だったさ。ワシは旦那様にこっぴどく叱られたよ。

『何故産んだ?』

と責められた…。
だから言ってやったのさ、
『旦那様との子だから産みました。』とな。

その日から、旦那様はどういう訳か、ワシを責めんくなった。
今まで通りに接してくれた。勿論、肉体関係は無くなった。

ワシが夜な夜な、ユウマの食料をくすねている所を見られた時があるのじゃが、何も言わなかった。

地下へ降りて来て、ユウマを見に来る事すら…


それがワシには、逆に不安だった。」

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