《MUMEI》
サプリメント
.


−−−次の日。



お昼過ぎ………。

わたしはダイニングで、目の前に並べられたモノに、視線を向けていた。



ミネラルウォーターのペットボトルと、

健康食品や、サプリメントの山。



すべて、お母さんがわたしのために用意したモノだ。


わたしは顔をあげて、キッチンにいるお母さんの方を見つめる。


「………昨日より、増えてる」


それだけ言うと、お母さんはわたしの方を見つめ、やんわりと笑う。


「インターネットで調べたの。それ、病気に効くのですって。昨日、やっと届いたのよ」


なんだか、得意げに言われた。


わたしはもう一度、サプリメントに目を向ける。この量で、果たして幾らの金額を投資したのだろう。想像もつかない。

わたしの足元では、ヒューが美味しそうにドッグフードを貪っていた。

彼がガツガツと、ご飯を口へ掻き込む音を聞きながら、わたしはぽつんと呟いた。


「………気休めじゃん、こんなの」


ただの、無駄遣いな気がして仕方なかった。





…………だいたい、



こんなサプリメントが効くなら、



医者なんて職業は必要ないし



それに、



わたしみたいな人間は、この世の中に存在しないはずじゃないか………。





わたしは顔をあげて、お母さんを見た。

お母さんはわたしの呟きが聞こえなかったのか、せっせと食器洗いに勤しんでいる。

諦めてため息をつき、サプリメントのひとつを口に放ると、ミネラルウォーターを手に取った………。





…………もう、やめてよ。



なにをしても、



意味が無いのにさ。



こんなサプリメントだって、



効き目なんか無いに、決まってるのにさ。



こーいうの、



『悪あがき』って言うんだよ。





−−−ねぇ、





みんな、





どうしてそんなに、





必死になるの??





こんなの、





ただ、





みっともないだけなのに、





ムダなだけなのに、





なんで、気づかないのかな………?





.

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