《MUMEI》

「樹っちー、若菜俺に対して厳しくない?」


「はーい、私の厳しさは愛の鞭でーす」


「うわ、聞いた?
浮気だ。不潔ー!」


「浮気されましたね」


「ちょっと樹もハル先輩と一緒になってふざけるのやめなさい!」

若菜は二人を叱る。


樹はたくさんの苦痛が氷のように溶け出すのを覚えた。



「お、樹っちが笑ったー
沈んだ声だったから心配したけど不要だったか。
若菜いるしな」
中林春道が人差し指で樹の鼻先を突く。


「……よく見てますね」
若菜は時折見せる全てを見透かした顔だ。


「俺、分かりやすいですかね?」
樹は思わず尋ねてしまう。

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