《MUMEI》
初めてのデート。
  
「は…はるか君///」

恥ずかしさと、かなたのせいであんな騒ぎになった事で気が動転して、彼女の手を掴んでその場から走って逃げてきた。


公園まで来ると、俺は息が切れていたが彼女はそれほどでも無く、俺を心配そうに見守っていた。

「大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だ…」

公園のベンチの所まで来ると、そこに腰掛けさせてジュースを買いに行こうとしたら、俺は何も持っていない事に気が付いた。

「私が買ってくるね、はるか君なにがいい?」
「えっ…あぁ…アイスコーヒー///」

そういえば、俺は手ぶらだったけど、彼女はカバンを持って走ってたのか。


「ごめん…」
「うぅん…嬉しい///」

彼女は飲み物を買ってきて、俺にあの時と同じようにコーヒーを渡してくると、俺の隣に座ってかなたが好きそうな甘そうなジュースを飲んでいた。

「…嬉しい…って…なんでだ?」

さっき、ジュースを買ってきた彼女が言った”嬉しい”という一言が気になった。

ジュースを買ってきた事が嬉しいってワケじゃないだろうし…。

「だって…はるか君があまり走れないんだとか、忘れ物しちゃったりとか…私、はるか君は完璧な人だと思ってたけど…そんな事無いんだって分かって…嬉しいの///」

走れないって…俺はかなたより早いんだぞ……持久力無いけど。

「…そっか」

俺の人間らしいダメな部分が見えた事で、身近に思えての”嬉しい”か…。

そんなに俺って、完璧な人間のように見られていたのか…。



「私からも聞いて良い?」

俺がさっき質問した代わりに、今度は彼女から質問があるらしかった。

「ん…あぁ…」

彼女は飲んでいたジュースを両手で掴んで膝に置くと、目を伏せて恥ずかしそうに俯いていた。

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