《MUMEI》

麻倉の頭の中は、


海南クラブとの試合でいっぱいだった。


その試合でぶつかった相手。


古田翔太。


友達だったわけじゃない。


話したことも数える程度。


ただ麻倉は同じセンターとして、


翔太をライバル視し、


勝つ為に練習も重ねた。


他にも上手いセンターは沢山見てきた麻倉だったが、


麻倉は、


翔太のプレーが好きだった。


気付いていなかったのかもしれない。


でも、


気付いた時には遅く、


再戦を求めた好敵手は、


もういない…










「麻倉…」









ベンチに座る麻倉の隣に、


泉が座った。









「…なんすか?」


「何で調子悪いかは知らないけど、


お前見てると、


調子悪いっていうより、


やる気ないように見える。」


「…」


「人間だからな。
そんな時もあるだろ。」


「…」


「何があったかも知らない俺が、


元気出せとか、


話してみろとか、


先輩風吹かして軽々しく言ったりはできないけど…」


「…」


「この試合勝ちたいんだ。
力貸してくれ。」


「…」


「…そっか。」

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