《MUMEI》 部屋に入るとパスタとスープが用意されていた。 「どうぞ召し上がれ。」 グリュリュリュー 恥じらいもなく腹がなる。愉快そうに微笑み 「どうぞ?」 もう一度言ってパスタを指す。 「イタダキマス」 空腹に勝てずあっさりと平らげてしまった。自己嫌悪。 「さて、食事も終わったし、本題に入ろうか。」 座り直し足を組んでやや深めにソファに腰掛ける。 やっぱり足が長い。 「俺の名前は神林 阿騎。ここの病院の医者だ。」 「医者ぁ!?」 「何か問題でも?」 「いや、てっきりホストかモデルかと…」 「素直な子だね、はい、名刺。 」 確かに名前の上に病院名と外科医と書いてある。 「それで、君の方は?」 ……… 「話したくない、かな?」 「話せる事がない…」 「何故?」 「記憶が無いんや、気づいたら、港のコンテナ置きのところで倒れとった。携帯も財布もなくて…自分の手がかりが、無いんや…」 信用されるかどうかは別として正直に打ち明ける。 ふむ、と少し思案してアキは簡単な質問をいくつかオレにした後、 「なるほど、本当みたいだね。……良かったらここにしばらく住むかい?」 「は?」 「いや、言葉のままだよ、しばらく住むかい?」 「見ず知らずの不審人物家に置くんかい!?」 「自分の立場が良くわかってるね、もちろんタダじゃない。」 「金はないで?」 「体で払ってもらうよ。」 !!!? 「あぁ、変な意味でなく、次の医学会に論文を提出しないといけなくてね。その製作に専念したいから俺の代わりに家の事をして欲しいんだよ。」 「あぁそういうことか。あんたのメリット少なくないか?」 「ご心配無く、金には不自由してないからね。」 「嫌味な奴〜。」 「君にだって悪い話じゃないだろ?その目、警察にいけない理由の一端だろ?」 指摘され、グッとなる、そう何故か俺の目は青い、 「不法入国の疑いかけられたくないだろ?」 痛い所を突かれた。 「取り引き成立、だろ?」 黒い微笑みに気圧されてつい頷いた。 「じゃあ君の名前を決めよう。」 「名前?」 「いつまでも君、とかじゃ不便だろ?」 「まぁ、そう、かな。」 「じゃあ、リュウ、リュウにしよう。」 「リュウ?」 「そう、昔飼ってた黒猫の名前だよ。」 「猫…」 よろしくと差し出された手を渋々とる。 アッシュブラウンの髪の奥で細まる切れ長の鳶色の目には気づかなかった。 同居開始。後悔第二歩。 前へ |次へ |
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