《MUMEI》
知るはずない
「智っ!朝は悪かったな」

「おぉ、今来たのか?」

「あぁ、今来たとこ」

「よっす、黎夜♪
 親父さん大丈夫だったか?」

「はよ、父さんも他の三人も
 もう大丈夫だってさ」

「良かったな!!」

「あぁ、サンキュ……あ!遅刻
 届け出してくんの忘れてた!!」

「「早く出してこ〜い(笑)」」

「あぁ、ちょっくら行ってくる!」



時計を確認すると、2限目の授業開始まであと約5分。


休み時間中に出してこなきゃななどと考えながら教員室へと急いだ。


そして、遅刻届けを出して担任とかるく話をしたあと、教室に戻る途中で聞き慣れた声に呼び止められた。



「月代君。ご家族の方は大丈夫?」

「柊…。あぁ、もう大丈夫だ」

「先生から事故の話を聞いたと
 きは、ビックリしたわよ。で
 も、ご家族の方達が無事なら
 良かったわね」

「あぁ、本当に良かったよ。心
 配してくれて、ありがとな」

「そんな、お礼なんていいわよ。…それにしても、運転手だけ
 は許せないわね」

「え?…あぁ。でもまぁ、かな
 り反省はしてるみたいだし、
 俺は家族が無事ならそれでい
 いよ」

「違うわよ。そのことじゃなく
 て、私が言いたいのは運転手
 の証言のことよ」

「…え?」





まさか、柊が言っているのは"あの証言"のこと…?


いや、違う

そんなはずはない。


そんなはずは…





「ハンドルが勝手に動くなんて
 有り得ないのに、どうしてそ
 んな嘘がつけるのかしらね」

「…な…んで?」

「どうかしたの?」

「……何で…そんなことお前が
 …知ってんだよ」

「……さぁ?どうしてでしょう
 ね」

「『さぁ?』って…」




柊は俺の言葉に対して妖しげな笑みを浮かべるだけで、何も言わずに教室へと戻ってしまった。




「……あり得ない」




俺は思わず呟いていた。

何で…何で柊は運転手の証言を知っているんだ?

確かに、トラック事故の事は先生に連絡した。

でも、運転手の証言の事は誰にも言ってないのだ。

智や椋も人の不幸をネタにして話したりしないし、警察だってあまりに信じられない証言だったため、マスコミにも話していないようだった。

実際、俺の見た限りでは一度も運転手の証言に関してはニュースで流していなかった。






なのに、何故柊は知ってるんだ?

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