《MUMEI》 無欲な志穂さん(…すごすぎ、だろう) 俺と忍は、同時にため息をついた。 「す、すみません。黙ってて。お客様のプライバシーに関わる事だから、言えなくて…」 「じゃあ、祐達も知らないんですか?」 「うん。言うつもりも無いし」 (驚くだろうなあ…) 自分の母親が、日本一の大企業のトップをメル友に持ってるなんて。 「すみません。『いつでも力になる』って言ってもらってたから、つい頼んだんですけど… 驚かせちゃって」 「そんな事、言われて…、るん、ですか?」 (あ、ちょっと冷静になってきた、…のか?) それとも、疲れただけなのか 忍の口調は先程より迫力が無かった。 「は、はい。特に困った事無いから、頼んだのは今回が初めてなんですけど。 あ、あと、弘也君だけメル友じゃないのは、彼はここに小さい時に一回来ただけで、後は来なかったんで」 (だから弘也は知らなかったのか、それに、だから…『弘也君』なのか。 それにしても) あの春日家の現当主に、『いつでも力になる』と言われて ただの、主婦の、志穂さん。 その、謙虚さと無欲さに、俺と忍は驚くしかなかった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |